震災ボランティアから学ぶ信頼の獲得方法

皆さんは、どのようにして信頼を獲得していますか。人は生きている限り信頼を獲得しなければうまく生きられません。もし、信頼を獲得しようと相手のためになることをして、それを「何かしてあげた」という気持ちでいるのなら、もったいないかもしれません。

 

東日本大震災の初期ボランティア

2011年の震災は各地に多くの被害をもたらしました。中でも沿岸部の被害は甚大で、津波によって田畑は荒れ、住むところを奪われた方も多くいます。

そのとき、業者や地元住民の方にまじって泥のかき出しやがれき除去を手伝ったボランティアの方がいました。まだ余震もあり、報道も充分になされていない頃です。
今でこそ被災した地域では全国各地からボランティアの方を受け入れて、体制も整っていますが、実は、初期の頃は地元住民の方々がボランティアを信用していなかったことをご存じでしょうか。理由は、ボランティアといってやって来ても、どうせすぐに帰ってしまうからです。

ボランティアの方には帰る家があるけれど、被災住民の方にはないのです。被災したばかりで心の余裕もない頃、ボランティアが歓迎される雰囲気はほとんどありませんでした。
初期のボランティアの方はどうしていたかというと、ただ黙々と作業をしました。朝から晩まで、一言も口を利かず、ただひたすら人の家の泥をかき出していたのです。助けてあげている、なにかしてあげているという心持ちではとても出来ない作業です。
ボランティアの方の心根が通じたのか、徐々に地元住民の方に声をかけられるようになりました。顔を覚えてもらえるようになった頃、仕事を頼まれます。勿論、払うお金がありませんから、当然無償です。ボランティアの方はこれを引き受け、いつしか多くの仕事が舞い込むようになりました。

 

覚悟が実を結ぶ

ボランティアの方も人間ですから、限界があります。そのうちボランティアの方の知り合いで手を貸せる人たちを集め組織を組み、ボランティアを派遣するようになりました。ただの派遣ではそれこそ会社のようになってしまうので、被災した地域に小屋を建て、そこで半分生活をしながらボランティアをすることにしました。

見慣れない建物が立って、すぐに反応したのは子供たちです。被災した子供たちの遊び相手にもなったことで、保護者との縁が生まれました。

地元住民の方も、ボランティアでありながらそこに住むという覚悟に信頼を深め、話がはなしを呼び、すんなりと受け入れてもらうことが出来たのです。

被災した地域の性質上、近隣の方同士のつながりが深いため噂が広まりやすいのも良かったのでしょう。ボランティアの最中は勿論、無駄口は叩きません。

ただひたすら作業をします。その内、活動が認められて市が評価し、活動資金がおりました。被災者から直接報酬はもらえなくても、他のところから下りたのです。

全国各地から寄付や活動物資が集まり、いつの間にか組織は大きく、評価されるものとなりました。何もない、それこそ泥しかないところから始めた活動が実を結んだ瞬間です。

 

「自分」の範囲

この話は、ただ手助けしてあげようという気持ちでは起こりえなかったことです。被災者本人ですら投げ出していたことを、代わってやるくらいの気持ちがあって初めてなしえることが出来ます。よく、自分の会社を自分の家だと思って掃除しようといいますが、それはその人にそう思える資質がないと出来ないことです。

思えない人はどうしても思えません。何故なら、それは「自分」の範囲が狭いからです。ボランティアの方に、何故そんなにもくもくと作業出来るのかと尋ねると、自分の住んでいる県のことだからと答えました。

つまり、住んでいる県全体が自分のものだという意識なのです。

自分の部屋は散らかしたくない、自分のものは必死に守るのと同じことです。それが自分のものだと思うとき、人は真剣になり、余計なことを考えなくなるのです。

人のことだという小さな範囲から、人のことも含めて自分のことだと思えるようになれば、はたから見ていて黙々と人のために作業しているように映るのです。自分のことですから、人のためにしてあげたという恩を着せることもありません。自分のことならさほどストレスがないのです。

 

まとめ

「自分」の範囲を広げることが、ゆくゆくは人からの信頼を獲得することもあります。我がことのように作業出来るのは、心から自分のことだと思っているから。

よって、自分のことだと思える種類のものに手をつけることが重要です。

無理に自分のものだと思っても難しいこともありますし、ストレスが溜まってしまうのでは意味がありません。

そして、初期に物事を始めるときは黙って作業をすることでより信頼を獲得しやすくなります。笑顔やうまい会話は必要ありません。

相手に覚悟を見せるのです。さらに言えることは、信頼を獲得しようとしている地域の性質を理解することです。対人であれば、その人の出身を把握しておくといいでしょう。