デジタルマーケティング界には、モバイルメッセージングアプリの普及と、人工知能(AI)の進歩という2つのトレンドが同時に起こり、ブランドは様々な新しい方法でコストを削減して、顧客とのコミュニケーションを行えるようになってきています。
欧米の小売業者やテクノロジー企業は、機械学習、自然言語処理プロセシング、ライブオペレータを組み合わせたチャットボットを試しており、顧客サービスや販売サポート、その他のコマース関連機能を色々提供しています。その現状をご紹介しましょう。
オンライン配車サービスUberのクリス・メシナ氏は、この動きを説明するために「会話型コマース」という用語を作りました。チャット、メッセージング、音声を使った自然言語インターフェースを利用して、人々、ブランド、サービスおよびボットと対話する。その結果、消費者がFacebook Messenger、WhatsApp、Telegram、Slackなどを介してブランドや企業と話をすることがふつうになるというのです。
賢い企業はこれらのテクノロジーを駆使して、コンテキストに沿った、関連性の高い、非常に個人的で会話型の消費者との新しい接点を見つけています。それによって商業取引はより偏在して私たちの生活にシームレスに統合され、ブランドとのやり取りの方法は永遠に変わってくると見られています。
メッセージングに慣れ親しんだモバイルネイティブ世代の消費者が増加していること、センサーやウェアラブル、データサイエンスの進歩で、想像を絶するレベルのパーソナライズと予測支援機能ができていること、支払いテクノロジーのデバイスへの統合などが、このトレンドを推進しています。会話型コマースのエコシステムの進化が、目まぐるしいペースで始まっています。それらにはどのようなものがあるでしょうか。
WeChatは4年前に中国の持株会社Tencentによって、中国市場向けに新しいモバイルファーストのメッセージング経験を作る目的で、テンセントの特別プロジェクトチーム(中国の主要デスクトップメッセージングソフトウェア、QQを所有している)によって作成されました。これは 短期間で急速に普及し、今では月間アクティブユーザ数(MAU)約7億人の、中国の主要モバイルメッセージングプラットフォームとなっています。
WeChatでは、チャット以外に、タクシーを呼ぶ、食糧配達を注文する、映画のチケット購入、Nikeの靴をカスタマイズして注文する、日々のフィットネスの進行状況の追跡、医者の予約、水道代を支払うなど、無数のショッピング関連の活動を行うこともできます。
Facebook Messenger
マーク・ズカーバーグ氏は「友人にメッセージを送るのと同じ方法で、ビジネスにもメッセージを伝えることができるはずだ」と講演。Facebookは会話型コマースの勢いに乗って、2015年にMessengerにピアツーピア決済を統合、完全なチャットボットAPIを開始して、企業がMessengerアプリ内で顧客とのやりとりができるようにしました。Messengerチャットから、最新のファッションをブラウズしたり、Uberの配車を発注することもできます。
Amazon Echo
AmazonのEchoデバイスは驚異的なヒットとなり、18ヶ月で3M以上の販売台数に達しました。 この成功の一部は、Amazon.comのホームページの巨大な意識構築力に起因するものですが、デバイスは顧客や専門家からの肯定的な評価を受けて、Googleにも同様のGoogle Home (https://madeby.google.com/home/)を作らせたほどです。
Echoの最も一般的な使い道は、音楽をかけること、情報の問い合わせをすることや家庭用デバイスの制御など。Alexa(デバイスのデフォルトのアドレス指定可能な名前、https://www.youtube.com/watch?v=jJopb09ieV8)も、Amazonの完全な製品カタログと注文履歴を活用して、購入するコマンドを実行することで、物を買うことができます。
Echo用のアマゾン開発者プラットフォーム(Alexa Skillsと呼ばれる)を通じて、開発者はSpotifyライブラリから音楽を再生したり、Googleカレンダーにイベントを追加したり、クレジットカードの残高照会など、Alexaのための新しいスキルを開発することもできます。スマホを手に取ることなく、Alexaに「ドミノのピザをオーダーをして」と頼むこともできます。これがまさしく会話型コマースなのです。
Operator
Uberの共同設立者ガレット・キャンプ氏によって開発されたOperator(https://operator.com/)では、コンシェルジュのよう動く「事業者」ネットワーク にあなたをつなげ、ショッピング関連のリクエストを実行することができます。 コンサートのチケットを注文したり、ギフトのアイデアを出したり、新しい家具のインテリアデザインの推奨事項を得ることもできます。
同社はまた、経路要求を支援する人工知能(AI)を開発し、品質の推奨事項について効率と人間の専門知識のために機械学習を組み合わせているので、時間の経過とともに間違いなくサービスはよりスマートになるでしょう。
Slack
Slackには内部ヘルプボット(@slackbot)があり、役に立つメッセージを出します。やり取りはテキストチャットコマンドを使ってできます。 同社はこのコンセプトを拡張し、開発者がSlackのアプリケーションディレクトリからアクセスできるSlack用のボットを構築できるようにする外部APIを公開しました。
米国ファストフードのTaco Bellは、Slackbot(Tacobot)を使って注文を受けています。これはウィットにとんだ人間的な対応をします。デバイスを通した発注とはいえ、そのようなサービスへの消費者の需要はまだ見られます。これはブランドがSlackのプラットフォームを活用して、視聴者を増やす可能性を示唆している例と言えます。
GoogleのAllo
Googleは、Facebook MessengerのライバルとなるAllo(https://blog.google/products/allo/allo-duo-apps-messaging-video/)を発表しました。 Alloの興味深い部分は、プライバシーと自己表現に関するいくつかの機能の他に、アプリのAIデジタルアシスタントである@googleです。同社は検索に適用された機械学習で何十年にもわたって頭角を現しているので、Alloのチャットボットはこの先非常に役に立つようになるだろうと予想されています。
Snapchat Discover + Snapcash
近年、ティーンエイジャーやミレニアルズ(米国のゆとり世代)に大人気のSnapchatには、ブランドも次々に接続しています。このメッセージングアプリは、近い将来、さらに魅力的な電子コマースプラットフォームになる兆候をみせています。
2015年にSnapchatは、ユーザがデビットカードをSnapchatに保管し、簡単なメッセージで友達とお金を送金できるバーチャル財布とも言えるSnapcash(https://www.youtube.com/watch?v=kBwjxBmMszQ)を発表しました。
ピアツーピア決済自体は、競合他社のVenmoがすでに確立しているため、Snapchatにとってはそれほど魅力的な機能ではありません。しかし、財布機能と支払い方法をアプリに追加することで、Snapchatが直接商取引を掘り下げるための基礎が築かれます。たとえばLancomeのビデオを見ながら、ユーザはSnapchatアプリに埋め込まれたeコマースページを訪れて、パートナー商品を購入できるようになったのです。
これは伝統的な音声やチャットの会話とは少し異なりますが、Snapchatはまったく新しいメッセージング方式で、商取引を会話に埋め込む新しい方法を提供して、1日に10Bビューを得ています。
AppleTVとSiri
2015年のAppleTVのアップデート(https://www.engadget.com/2015/11/06/apple-tv-review-2015/)で、AppleはSiriの音声アシスタントをUIの中心に持ち込みました。お好みのテレビ番組を再生したり、天気をチェックしたり、特定種類の映画を検索購入したり、様々なタスクをSiriに依頼することができます。機能の幅ではAmazonのEchoにははるかに及びませんが、AppleがSiriとAppleTVの統合を拡大することは間違いなく、Apple TVの新バージョンをEchoと直接競合させる可能性もあります。
Magic
Magic(https://getmagic.com/)は、2015年初頭に開始され、オールインワン・インテリジェントのバーチャルアシスタントをサービスとして起動した、会話型コマースの最初の例の一つと言えるでしょう。 このサービスにはアプリがなく、純粋にSMS経由でアクセスする点がユニークで、どのようなタスクにも対応できる、ほとんど人間の秘書と同じようなものと言えます。 ユーザとプレスアカウントに基づいて、Magicはフライト予約の設定から見つけにくい食料品の注文まで、様々な奇妙な仕事(https://www.youtube.com/watch?v=YTH14kk2IrI
)を成功裏に片づけることができるようです。
しかし、Magicはリクエストを実行する人間オペレータと結びつき、サービスプロセスを自動化するためにAIを活用していないために、サービスの価格は高価で、今後主流からは外れていきそうです。
Kik Bots
KikのCEOであるテッド・リヴィングストン氏の将来のビジョン(http://blog.kik.com/2016/03/01/the-future-of-chat-isnt-ai/)では、野球場で試合を見ながらKikアプリを開き、目の前の座席にあるQRタイプのコードをスキャンしてスタジアムのコンシェルジュにビールを注文すると、座席まで届けてくれるようなもの、となっています。
「チャットは次の偉大なOSになるだろう。 アプリは新しいブラウザと考えられるようになり、 ボットは新しいウェブサイトになる。これが新しいインターネットの始まりだ」と彼は語っています。
Kik(https://www.kik.com/)は275MのMAUを持つ十代の若者の中で最も人気のあるチャットアプリの一つで、ユーザの4割は13〜24歳。2015年 4月、KikはSephora、H&M、Vine、Weather Channel、Funny or Dieなど16のローンチパートナーを持つ独自のボットストア(https://bots.kik.com/#/)を立ち上げました。Kikのボットはまだあまり洗練されておらず、まるで1994年にインターネットを使用しているような感覚だと言われます。しかしAPIとボットが時間の経過と共にどのように進歩するかも見てみましょう。どこかのブランドがKikの人気に投資するかもしれません。
Telegram
ロシアのパヴェル・デュロヴ氏によって、WhatsAppのスピードとSnapchatの瞬時性を組み合わせた軽量メッセージングアプリとして作られたTelegram(https://www.telegram.org/)は、2013年に立ち上げられました。MTProtoプロトコルの使用によりプライバシーとセキュリティが強化され、100万件のMAUがあり、人気の点ではメッセージングアプリの第2層に組み込まれています。
結論
これらのプラットフォームとテクノロジーが進化するにつれて、新しい形のブランド対消費者のコミュニケーションとインタラクションが登場してくることでしょう。それらの中には、うまくいくものも失敗するものもあるでしょうが、この先これらの技術で可能になる、よりインテリジェントなタッチポイントの恩恵を消費者とブランドの両方が受けられることは間違いありません。
参考記事
https://chatbotsmagazine.com/11-examples-of-conversational-commerce-57bb8783d332#.ppcr0yj7m
Originally posted on 2017年3月21日 @ 3:00 PM