今話題の人工知能(AI)。メディアでも人工知能の話題は連日取り上げられており、私たちの日常生活の様々な面にも少しずつ浸透してきているようです。
人工知能の進化には著しいものがあり、私たちはそれを十分把握しきれていない部分が多いのですが、ここでは人工知能がeコマースに与えうる影響について、海外の専門家の意見を引用してみたいと思います。
これまで「機械化」と言えば「一律化」のことでした。しかしeコマースに果たすであろう人工知能(AI)の役割を考えると、その最大の強みは一律化とは逆に、顧客一人一人により個人的な購買体験を作り出すこと、つまりほかの顧客とは違う、一人一人のパーソナル化ができるところにあると言えるのではないでしょうか。
それは 製品のパーソナル化から、バーチャル(仮想)のパーソナルショッパーにまで至ります。
言うまでもなくeコマースは競争の激しい業種です。そして現在消費者の注意力の持続時間は、ますます短くなる傾向にあります。
リンクをクリックしてからウェブサイトが現れるまでに3秒以上かかると、40%の人がサイトを去り、オンラインショッピングカートは平均68%以上放棄されていると言われています。
テクノロジーは常に、より収益を上げうるサイト作りの努力を助けています。 マーケティング、ヘルスケア、ファイナンスなどの業界で人工知能(AI)はこれまでにもその価値を実証してきましたが、今やオンラインコマースにも飛躍しようとしているのです。
世界で最も多額の資金を調達をしている人工知能(AI)企業のSentient Technologies社(http://www.sentient.ai/)のCEOであるアントワーヌ・ブロンドー氏は「5年先には、人工知能が意思決定や、先制的なソリューションの作成、洞察の提供でもより大きな役割を果たすようになるだろう」と予想しています。
その結果、 ロジスティクス、eコマース、ヘルスケア、ファイナンスなどのドメインやその他の分野も人工知能から大きな利益を得るようになり、社会はより効率化されるのだそうです。
それでは、人工知能(AI)が今後のeコマースに影響を与えると考えられる場面を以下に挙げてみましょう。
ビジュアル(視覚)検索
eコマースサイトを駆動するソフトウェア・プラットフォームは、消費者が画像をアップロードして、それと似た、あるいはそれを補完するような製品を見つけることができる、視覚的な検索機能を作り出しています。
特にモバイル経由のビジュアル検索機能では、色、形、サイズ、生地、ブランドなどの手がかりを「読み取る」ことができるようになってます。 これは消費者が探しているものをすぐに見つけ出すのに大変役立ちます。
深い機械学習と小売用の予測分析プラットフォームのInfinite Analytics社(http://infiniteanalytics.com/)の共同創設者兼CEOのアカシュ・バティア氏は「SnapchatやInstagramの時代、そして注目度の持続時間が急速に低下しているデジタル時代の現在、人工知能駆動のプラットフォームはeコマースの成功には不可欠だ」と語っています。
これを使えば、昨日ジムで見かけた新しいナイキの靴であろうと、友達の新しいドレスであろうと、消費者は欲しいと思うもののために買い物に出ることなく、よく似た商品をeコマースショップ上で簡単に見つけることができるからです。
オンラインからオフラインへ
このようなビジュアル検索機能は、オフライン(普通店舗)からオンラインへのつながりも作り出します。 小売業者が消費者のブランドへの関わり方を再定義するにつれて、将来の小売は顧客サービスを改善するために、買い物客についてより多くの情報を有するようになり、それによって最終的により多くの商品を販売する機会を創出していくでしょう。
このオフラインからオンラインへの経験は、買物を必要最小限の手順で行えるようにして、消費者に自律感を与えることが大切です。
これから先のオンラインショッピングでは、人工知能(AI)を使って、製品のレビューなどの消費者がウェブサイトに投稿した情報を収集し、それに応じた提案をするようになっていきます。
パーソナル化
eコマースのパーソナル化は、なにも新しいものではありません。しかし人工知能(AI)の技術で、あらゆる規模のオンラインショップが、パーソナル化に焦点を当てたツールへのアクセスを増やしていっています。
現在、多くのオンラインショップが、コラボレーションフィルタリングを使って顧客に推奨商品やサービスを提供しています。
コラボレーションフィルタは、ユーザの閲覧履歴や、ベストセラー、業界のホットなトレンド、その他の一般的なパラメータに基づいて結果を表示しますが、オンラインストア、店舗販売店、モバイルアプリなど、データを1つのチャネルからしか集められません。 人工知能(AI)では、これらすべてのチャネルにわたってシームレスな顧客体験を与えることができます。
バティア氏は、パーソナル化は多面的な問題だと言います。消費者の購入習慣に関する多くの情報は、実はとらえるのが非常に難しいものです。適切なパーソナル化のためには、多くのデータを分析しなければなりません。
深い学習アルゴリズムを使うことで、オンライン小売業者は一つ一つの新しいシグナルを学び続けて、パーソナライズした商品やサービスをより優れたものにしていくことができます。
バーチャル・パーソナルショッパー
人工知能(AI)に対応しているStitch Fix社のCOOであるジュリー・ボーンスタイン氏はこう語っています「伝統的な小売業者は、消費者が買い物をしたがり、消費者にはその時間があることを前提に考えていました。
しかし世の中には、買い物がうまく、買い物の時間を節約できる人もいるわけです。そこで時間のない消費者にとっては、パーソナルショッパーを持つことが実用的になります。」
男女衣料のStitch Fix(https://www.stitchfix.com/)、Trunk Club(https://www.trunkclub.com/)、化粧品のBirchbox(https://www.birchbox.com/)には、このようなサブスクリプションサービスがあります。
オンラインストアに特化した、洗練された人工知能技術を導入して、仮想のパーソナルショッパーがユーザに代わって買い物をするeコマースストアが増えています。The North Face(https://www.thenorthface.com/)もこの優れた一例と言えるでしょう。 このブランドでは人工知能技術が、ユーザの最適なジャケット探しの手助けをしてくれます。
ブランドは、自然な会話や人工知能(AI)から派生した認知データに基づいた商品を推奨して、よりインタラクティブな買い物経験を生み出しています。 インテリジェント・ショッピングアシスタントは人間よりも高速で、膨大な量のデータを最小限の時間で分析して、そのブランドのイメージを反映するように設計された「性格」を持ち、人間のようなやり取りをすることができます。
この先ユーザにとって仮想のパーソナルショッパーは、オンラインショップとの面白く魅力的な接点となっていくことでしょう。
ユーザは人工知能(AI)にオープンな反応
人工知能(AI)が小売でどのように使われるのかについて消費者の関心がとても高いことが、北米の調査会社J. Walter Thompson社(https://www.jwt.com/northamerica/news)の調査でわかっています。米国のミレニアルズの70%が、人工知能(AI)技術を使ってより興味深い製品を紹介してくれるブランドや小売業者を好むと回答しています。
そして 72%が、技術の進歩に伴って、人工知能を使用しているブランドは、ますます消費者の望んでいるものを正確に予測できるようになるだろうと考えています。
「優れた顧客サービスのために人工知能を活用する機会はすでに手の届くところにあり、小売業者は人工知能を活用してあらゆるユーザに、よりパーソナル化したショッピング体験を与えるべきだ」とバティア氏が言うように、あらゆる規模のeコマースブランド向けのオプションも増えてきています。皆さんも機会がありましたら、ぜひ色々試してみてください。
参考記事
https://www.entrepreneur.com/article/284637
Originally posted on 2017年3月20日 @ 10:30 AM